ウェイトトレーニングにおける私点


私の思うところ

<はじめに>

 元々私はウェイトトレーニングと言うものは運動パフォーマンスの向上において必要のないもの、と捉えておりました。勿論今もその考えにブレは無く、過度なウェイトトレーニングは全く必要のない、と言うより害でさえあると思っております。
 ただ、人はそれぞれに目的や嗜好が多様で異なるため、一概に全てを否定する事はできません。そういう意味で現在ウェイトトレーニングに励んでおられる方々を否定するものでは勿論ありませんので、その点は誤解なさらぬよう。私が訴えたいのは運動パフォーマンスの向上において直接的・間接的にもはたして必要であるか?という点に疑問を持っているだけです。


<なぜボトムアップトレーニング?>

 なぜボトムアップトレーニングか?その説明の前に、ウェイトトレーニングの害についてお話致します。

  1. トレーニング方法(要素還元的トレーニング)

     昨今のウェイトトレーニング、特に「科学的」と名のつくトレーニングは、いかにも「科学的」らしく、要素還元的なトレーニングが主なものです。どこどこの筋肉が何パーセントアップしたとか、ここがまだ弱いからこういうトレーニングをしましょうとか、データをとりデータに裏付けされた内容のトレーニングをより局所局所に分け細かく行います。勿論データを取る事は大事な事ですし、弱いところが数値として目に見えればトレーニングをしている方も解りやすいし、納得もいく事でしょう。
     そして血のにじむようなウェイトトレーニングによって、データを見ればそれこそサイボーグのような完璧な数値。本人も納得の仕上がり。さあ、いざそれが運動パフォーマンスにプラスになっているのかと言えば、そのほとんどがことごとく期待を裏切っています。

     さて、ここで問題なのは、そのトレーニング方法が全身(全体)としてのバランスを考えて行われたものではなく、局所的に要素還元的に筋力をアップさせているまたはデータとして表している。と言う事です。このトレーニングに費やした時間を他の動きや技術的なトレーニングにあてがわれた方がいかに有益だったかと悔やんでも後の祭りなのである。
     
  2. トレーニングによる悪影響Ⅰ

     長時間、もしくはウェイトトレーニングメインで身体を鍛え上げた場合、出力系統は勿論強くなります。しかし繊細な動きを調整する機能が鈍感になってしまいます。簡単に申しますと、筋肉自体がいつも力を入れておかないとならない、と記憶してしまうのです。繊細な動きを表現したくても、必要以上に勝手に力が入ってしまうのです。これでは運動パフォーマンスが上がったとは言えないどころか、低下してしまったと言っても過言ではありません。
     
  3. トレーニングによる悪影響Ⅱ

     繊細な動きを仮に必要としない場合についてもやや問題があります。筋肉モリモリ!パワーもアップしました。強靭な身体を手に入れたように思います。
     筋肉には拮抗筋と言って、必ず正反対の動きをする筋肉が一対となって働きます。例えば腕を伸ばそうとした時には主に上腕三頭筋が使われます。反対に腕を曲げようとした時には主に上腕二頭筋が使われます。それぞれ「伸筋」「屈筋」と言いますが、これらは拮抗した関係にあります。要は腕を伸ばそうとした時に無意識に曲げようとする力も働くのです。伸ばすと言う運動にブレーキが掛かるわけです。目的の運動にブレーキが掛かるわけですから、動きの効率は良くありません。車に例えると、あなたは高出力のスポーツカーを手に入れたのですが、走行中常にサイドブレーキを引いたままアクセルを吹かしているのです。と言う事は、ファミリーカーでもサイドブレーキを下ろして走った方がどんなに楽な事でしょうか。
     このように鍛え上げれば鍛え上げる程ブレーキも強くなってしまう可能性が有るのです。
     
  4. オーバーワーク

     トレーニング好きな方、特にウェイトトレーニングが好きな方はとかくやりすぎる傾向が有ります。トレーニング=身体を鍛えると言う事は、乱暴に言うと筋肉に大なり小なり傷害(ダメージ)を与えると言う事です。ただし、筋肉は適切な休息を与えれば傷害を受けた時点より強くなります。これを「超回復」と言います。適正練習量と休息がバランス良く保たれている以上身体は強くなります。しかし練習好きなトレーニーは回復を待たずに次々と身体に課題を与えてしまします。筋は肥大しているのに思った以上に効果が上がらないばかりではなく、以前より弱くなっている可能性があります。明らかなオーバーワークなのですが、意外にこのような事がまかり通っているのです。

 以上が私がウェイトトレーニングは運動パフォーマンスの向上には必要がないと思う主な要因です。4のオーバーワークについてはウェイトトレーニングに限らずですが。
 さて本題に入ります。ボトムアップトレーニング(BUT)もウェイトトレーニングというカテゴリーに区分されますが、なぜBUTは推奨されるのでしょうか?簡単に答えますと、上記の問題点を全てクリアしているからです。難しく答えても上記の問題を全てクリアしているからです(笑)
 冗談はさておき、ではひとつずつ見ていきます。
 

1のトレーニング方法(要素還元的トレーニング)について
・要素還元トレーニングからの脱却 

 従来のトレーニングを細かく細かく分化して筋肉を鍛えていく事に弊害が出るということを指摘しましたが、BUTでは全身の筋肉を協調させ、連動させる事を大事にします。
 BUTでは特に最重要メイントレーニングである「スクワット」はフルスクワットを行います。そのスクワットを行うに当たっての、更に正しいフォーム・理にかなったポジションと言うものが有ります。重いものを背負って屈伸するのですから、フォームやポジションが正しくなければ上がりませんし、間違ったフォームは何より身体に偏った負荷が掛かり逆に痛めてしまう可能性も有ります。一般のスポーツジム等で教わるスクワットフォームは大概体幹部を固め可動範囲もフルスクワットのように深くはしゃがみません(ハーフスクワットと言います)。このフォームを全てとしたならば我々の行うフルスクワットはできませんし、それがフルスクワットは危険ですからやめましょうという理由にもなります。実際スポーツジムでフルスクワットを教えてくれる事はほとんどないでしょう。ここではやり方についての説明ではないので省きますが。
 フルスクワットを行う事は全身(主に体幹部と下半身)の筋肉をフルに又は順番に使っていくことが必要になります。ハーフスクワットにおいてはその可動範囲と上半身を固める(胸を張り、腰を反る等)という制限のため、どうしても単関節・単筋肉の運動要素が強くなります。また機械的クランク運動になります。しかし我々のスクワットでは上半身はできるだけゆるめる(胸は含み、背は丸く、腰は中立等)と言うようにここから大きな違いが有ります。(この時点でスポーツジムでは注意されますが...)このフォーム、またはポジションも大切なのですが、これでスクワットを行うと嫌でも全身の筋肉を協調して使っていかなければ上がりません。故に従来の単関節・短筋肉的な運動要素から、多関節・多筋肉の運動要素になり更にはそれぞれの局面において動きの連動を伴わなければなりません。筋力アップと共に全身の協調性を養う事が出来るのがボトムアップレーニングです。


2,3のトレーニングによる悪影響について
・連動性、協調性を養う

 1で記した事に重複してきますが、BUTのスクワットでは従来のスクワットに比べ全身のバランスと言うものが非常に強化されます。一般的にフリーウェイトのトレーニングはマシンで行うそれらよりバランス感覚も強化されます。しかし、上半身を固めるフォームとハーフスクワットという制限が有る上、最近は低重量・高回数のトレーニングが主流となっていて、せっかくのフリーウェイトで行うメリットが軽減されているようにも思います。高重量に挑戦したとしても上半身を固めるフォーム、ハーフスクワットによる機械的クランク運動で、ひとつの筋肉に負荷が掛かりっぱなしでとにかく力ずくと言う印象が拭えません。BUTでは高重量でのスクワットですから一見こちらの方が力ずくのように思えますが、高重量をフルスクワットで上げると言うのは力ずくだけではどうにもならない部分が必ずあります。そして体験すると良く解ります。簡単に言いますと、いかに楽をして上げるか。ということです。この楽をして上げると言うのは言いかえると、あらゆる筋肉に重量を分配すると言う事が言えます。そして、その局面局面でしっかり働く筋肉、補佐する筋肉、休む筋肉等が有ると言う事です。また、拮抗筋の話をしましたが、拮抗筋がでしゃばっては主導筋が巧く働きませんので、その調整も必要になります。また「しゃがみ~立ちあがる」までの動きがスムーズでなければ途中で潰れてしまいます。それぞれの動きに対して邪魔をしない連動性も強化されるのがBUTと言う事になります。


4のオーバーワークについて
・休む事もトレーニングの重要項目

 ボトムアップトレーニングでは休む事を積極的にトレーニングのひとつとして取り入れてます。大きく3つの局面で休みの概念が有ります。
 ひとつは極めて短い時間の休み。2,3の項目に記したように、運動中しっかり働く筋、補佐する筋、休む筋と言うように運動の最中でもしっかり休ませている筋肉があると言う事。(できれば自覚出来ていければなお良い)
 二つめは中くらいの休み。運動と運動の間にインターバルを置きますが、通常スポーツジム等のウェイトトレーニング場にはイスを設置しているところは有りません(器具のすぐそばにと言う意味で)。そして、インターバルの間はトレーニーも休憩とは言っても、呼吸を整えるとか漠然と疲れたから休むくらいしか考えてはいないと思います。しかしBUTでは器具のすぐそばにイスを設けております。インターバルの間は積極的に身体をゆるめ休みます。積極的にと言うのは、自分が今完全に休憩しているんだと言う事を身体に(脳に)信号を送らせます。これは、ただ漠然と休憩していても身体(脳)は興奮していますから、ホントに休んでいるのか、運動しているのか認識できません。その為にせっかく休憩していても回復に必要な成長ホルモン等が分泌しづらくなります。せっかくの休憩ですからここで少しでも回復すれば次のトレーニングがそれだけ効率よく行えます。そういう意味で、インターバルのときはイスにクッタリ座り真剣に(?)休みます。自分がトレーニーの場合、ウェイトの付け替え等も他人にしてもらいます。どんな大先輩でも自分が休んでいる時は先輩が付け替えます。ここに変な上下関係は必要ありませんね。
 三つ目は長い休み。BUTでは同じ部位のトレーニングを次回行うのに2日間の休息を推奨しています。BUTでは高重量・低回数を基本にしておりますので、トレーニング時間も非常に短いです。実際アスリートが初めてBUTを経験するとそのトレーニング時間の短さに不安や時には不信感さえ持つことも良くあります。時間は短いのですが、自分の限界に近い重量を上げるわけですから、身体は十分に疲弊(極端に言うなら破壊)されています。そこから先更に何か負荷を掛けるトレーニングは必要ありません。そして、破壊された身体を必死に修復しようと体内では物凄い化学変化が起こっています。その修復に48時間掛かると言われています。丸2日しっかり休んだのち身体は以前より強くなっています。これを超回復と呼びますが、BUTはこの超回復を狙った、又は超回復の連続を狙ったトレーニングと言えます。そうは言っても超回復を狙うにはそれ相当の(自己に合った)負荷は必要です。故にBUTはその時々に無理は有っても決して無茶苦茶な事はしません。オーバーワークとそうでない境目を知ることもできる優れたトレーニングです。